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自作

2008年3月17日 (月)

カトちゃんペ

灰黒灰黒黒黒灰灰紺灰黒黒灰灰白灰黒黒黒黒黒灰黒黒白黒黒紺黒黒灰灰紺灰黒黒灰灰黒黒白黒黒灰黒灰灰灰黒黒黒黒黒灰灰灰紺灰灰黒黒白黒紺黒黒灰灰黒黒灰黒灰灰灰黒黒…

黒。

私の真っ赤なコートは、この駅コンコースに代表される『社会』とやらへのアンチテーゼである。私はしゃべれないから、態度で示すしかない。バッカばかしい。

「こいつら死んだ魚みたいな目してるくせに、みんな生きてるのがキモイ。家に帰ってセックスとかオナニーとかするねんで。ほんま、吐き気する。」

私の台詞はいつもカナが大声で代弁してくれる。唯一無二の親友だ。と、さっきまで辛辣だった彼女の語り口調が突然猫撫で声に変身し、またもやいつもの声に変わった。私に向かって「カトちゃんがアンタをご指名ですわよ」と叫びながら携帯を投げつける。まるで万華鏡に拡声器をつけたような女。でも、タッパもあって、めちゃくちゃ顔が小さい上にチョー美人。道行く男は皆振り返るのに、とてつもなく下品なワードを公衆の面前で叫ぶ。左耳がきこえない、とかいう話は嘘ではないかと勘ぐる程、そういう話をしている時のカナの表情は確信犯みたいで楽しそう。ほんと、羨ましいくらいにすぐに怒ってすぐ笑う。私にはないものを、全部持ってる。そういうとこ、好き。

カトちゃんとは1週間ほど前に、この万華鏡女と一緒に3Pをして、そういえばこのコートはその時もらったゴマンエンで買った。まだ店に居た頃のカナの客で、アフターで一緒にご飯を奢ってもらった後カナんちで3Pしてお金をもらったのが始まりで、もう1年くらいずっとそーゆー関係。カトちゃんはなんか家の商売をついだとかで、ダイヒョートリシマリヤクセンムとかかいてある名刺をもっている。要は、けっこー金持ちのボンボンらしい。

「元気?」と言われ、リアル花びら入りジェルネイルで受話器をカチカチと二回鳴らす。「元気じゃねーのね」とカトちゃんは笑っている。「今からヤりたいんやけど、時間ある?」「カチ」「今日は君だけでいいんやけど、大丈夫?」


3秒。頭の中にハテナマークがインターネットのポップアップみたいに出てきた。ま、どーでもいっか。


「カチ」「じゃあ迎えに行くわ。今どこにおるか電話切ってからメールして。」「カチ」「んじゃ。」

カトちゃんは今までセックスをしてお金をくれた大人の中で、ちょっと変だけどけっこう好き。まあ、殺されることはないだろうし、電車で家に帰るのも邪魔くさいしいいや。

「カナー。今日はあんたいらんらしいけど、どーする?」と声をかけると、カナは周りが振り返る程の大声で「アタシ今日ボウズやん!おもんないー!!」と叫びながらしゃーなしで学校に向かった。カナと別れ、梅田のマクドからカトちゃんにメールをし、少し時間を潰す。


カトちゃんの右腕はない。うまれた時からずっとないらしい。ラブホのジャグジーで肩の付け根を見た時、カトちゃんの歴史を感じて、なんだか少し可哀相になってペロリと舐めた。あん時、セックスしている時より恥ずかしそうに笑ってたなあ。一回りくらい歳は違うけど、他のオヤジよりは見た目は若くて、キャンパスに居てそうな留年したヤツみたいな雰囲気。別にカトちゃんならお金もらわなくてもいいのになと思っていると、本人から着信で焦る。「ラウンドワンの向かいに停まってるから来て」と言われるがまま向かった。


もう薄暗い。交差点の角にある街頭の色がキレイ。街角に立っているとホストがウザイ。あの調子乗ってる女の声がとてつもなくウルサイ。やっとカトちゃんの車のドアを開けた頃、私の機嫌は絶不調に達していたし、もちろんその機嫌の悪さが帳消しになるような関係でもない。カトちゃんは別に私のカレシではないし、カレシなんていてもなんの役にも立たない。「リョーコ、なんか機嫌わるそうやから、ラーメンでも喰ってドライブでもするか。」と呟いて、彼は車を走らせた。




なんで名前で呼ぶんだろう。